2025年4月 訪日外客数が過去最高を更新!初の390万人突破で観光立国へ弾み
日本政府観光局(JNTO)が2025年5月21日に発表した推計値によると、2025年4月の訪日外客数は3,908,900人を記録し、単月として過去最高を更新しました。
これは、これまでの最高記録であった2025年1月の3,781,629人を上回り、単月で初めて390万人を突破する快挙です。前年同月比では28.5%増と、日本の観光市場が力強い回復と成長を示しています。
好調の要因:桜シーズン、イースター休暇、そして航空路線の拡充
4月の訪日外客数増加の背景には、複数の要因が挙げられます。
- 春の桜シーズンによる訪日需要の高まり: 例年、桜の見頃となる4月は訪日旅行のハイシーズンであり、今年も多くの市場で日本への関心が高まりました。
- イースター休暇の影響: アジアの一部市場や欧米豪市場では、イースター休暇が4月中旬にずれ込んだことで海外旅行需要が増加し、訪日外客数の押し上げに貢献しました。
- 航空路線の拡充: 各国からの新規就航や増便、チャーター便の運航再開などが、訪日アクセスの向上に大きく寄与しました。
特に、東アジアでは中国、香港、欧米豪では米国、豪州からの訪日外客数が顕著に増加し、全体の数字を牽引しました。
記録を更新した市場:単月・4月それぞれで過去最高を記録
今回の発表では、多くの国・地域で訪日外客数が過去最高を記録しました。
単月過去最高を更新した10市場:
- インド
- カナダ
- メキシコ
- 英国
- フランス
- ドイツ
- イタリア
- ロシア
- 北欧地域(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)
- 中東地域(イスラエル、トルコ、GCC6か国)
4月として過去最高を記録した11市場:
- 韓国
- 中国
- 台湾
- 香港
- シンガポール
- マレーシア
- フィリピン
- ベトナム
- 豪州
- 米国
- スペイン
これらの市場では、継続的な訪日旅行人気に加え、航空便の増強や現地の長期休暇、経済状況の好転などが訪日需要を後押ししました。
市場別の動向ハイライト
- 東アジア:
- 韓国(721,600人、前年同月比9.1%増): ウォン安傾向にもかかわらず、新規就航や増便、チャーター便が寄与し、4月として過去最高。
- 中国(765,100人、前年同月比43.4%増): 新規就航や増便、清明節休暇が大きく影響し、4月として過去最高。
- 台湾(537,600人、前年同月比16.9%増): 増便やチャーター便、クルーズ船寄港に加え、4連休が寄与し、4月として過去最高。
- 香港(263,600人、前年同月比42.9%増): 新規就航、復便、増便に加え、清明節休暇やイースター休暇のずれ込みが影響し、4月として過去最高。
- 東南アジア:
- シンガポール(60,000人、前年同月比29.5%増): 日本人気と直行便数の増加、祝日が寄与し、4月として過去最高。
- フィリピン(91,000人、前年同月比32.8%増): 復便、好調な経済状況、イースター休暇のずれ込みが寄与し、4月として過去最高。
- インド(37,300人、前年同月比61.0%増): 予約の早期化や増便、経由便の利便性向上が寄与し、単月として過去最高。
- 豪州・北米:
- 豪州(115,200人、前年同月比42.6%増): イースター休暇のずれ込みとアウトバウンド需要の増加が寄与し、4月として過去最高。
- 米国(327,500人、前年同月比43.1%増): イースター休暇のずれ込み、継続的な人気、イベント開催が寄与し、4月として過去最高。
- カナダ(72,600人、前年同月比39.3%増): イースター休暇のずれ込みと継続的な人気、直行便数の増加が寄与し、単月として過去最高。
- 欧州:
- 英国(69,500人、前年同月比43.6%増): スクールホリデー、イースター休暇のずれ込み、継続的な人気、経由便の多様化が寄与し、単月として過去最高。
- ドイツ(57,200人、前年同月比58.8%増): イースター休暇のずれ込み、継続的な人気、クルーズ需要、経由便の多様化が寄与し、単月として過去最高。
- イタリア(45,600人、前年同月比83.5%増): イースター休暇のずれ込み、継続的な人気、新規就航、経由便の多様化が寄与し、単月として過去最高。
- スペイン(24,200人、前年同月比106.4%増): イースター休暇のずれ込み、直行便の再開と増席、経由便の多様化、継続的な人気が寄与し、4月として過去最高。
今後の展望
JNTOは、2023年3月に策定された第4次観光立国推進基本計画で掲げられた「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3つの柱の実現に向けて、今後も市場動向を綿密に分析しながら、戦略的な訪日旅行プロモーションに取り組んでいくとしています。
今回の記録更新は、日本の観光産業にとって大きな追い風となるでしょう。航空会社の人手不足や旅行費用の高騰、欧州地域におけるフライト時間増加などの課題は残るものの、円安傾向の継続や、各国での日本旅行への根強い人気が、今後の訪日外客数増加に繋がることが期待されます。
インバウンド集客プロとしての分析と所感
2025年4月の訪日外客数が過去最高を更新したことは、日本のインバウンド市場が完全な回復期から新たな成長フェーズへと移行したことを明確に示しています。単月で390万人を突破したことは、もはやコロナ禍以前の数字を基準にするのではなく、新たな目標設定が必要であることを示唆しています。
評価すべきポイント:
- 市場の多様化と厚み: 注目すべきは、単月・4月として過去最高を記録した市場の広がりです。東アジア主要国はもちろんのこと、欧米豪、東南アジア、インド、中東、北欧といった広範な地域からの訪日客が増加しており、特定の市場に依存しない「厚みのある集客」が実現しつつあります。これは、地政学リスクや経済変動に強い、持続可能なインバウンド市場構築に不可欠な要素です。
- 航空路線の回復と拡充の寄与: 各市場のコメントで繰り返し言及されている「新規就航」「増便」「復便」は、インバウンド集客における最も重要な基盤です。物理的なアクセス手段が整わなければ、需要があっても来日できません。航空会社や空港関係者の努力により、座席供給量が増加したことが、今回の好調の最大の牽引役と言えるでしょう。特に長距離市場では直行便の有無や経由便の多様化が、来訪決定に大きく影響します。
- 「日本人気」の継続性と深掘り: 多くの市場で「継続する日本人気」が言及されています。これは単なる一時的なブームではなく、日本の文化、食、自然、エンターテイメントなどが多角的に外国人旅行者に評価され、リピーター形成にも繋がっていることを示唆しています。SNSを通じた情報拡散や口コミの力も大きいと考えられます。
今後の課題と戦略的視点:
- 円安頼みからの脱却と消費額最大化: 円安は訪日旅行のコストパフォーマンスを高める強力な要因ですが、これだけに頼る集客はリスクを伴います。今後は、単なる「安さ」だけでなく、「体験価値」や「特別感」を訴求し、富裕層や高消費額層の誘致を強化すべきです。地方での宿泊や体験コンテンツの拡充は、消費額拡大に直結します。
- 地方誘客の具体的な成果創出: 「地方誘客促進」は長年の課題ですが、今回のレポートでは具体的な地方誘客の成果を測る指標が不足しています。今後は、三大都市圏への集中を緩和し、地方への分散を促すための施策をより具体化し、その効果を数値で示していく必要があります。例えば、地方空港への直行便誘致、地方独自の観光コンテンツ開発、多言語対応の強化などが挙げられます。
- オーバーツーリズム対策と持続可能性: 訪日客数の増加は喜ばしい一方で、一部地域ではオーバーツーリズムが顕在化し始めています。住民生活との調和、自然環境への配慮など、「持続可能な観光」の実現に向けた具体的な対策が急務です。料金設定の適正化、分散化プロモーション、情報提供の工夫など、多角的なアプローチが求められます。
- 労働力不足への対応: ホテル、飲食、交通機関など、観光関連産業における人手不足は依然として深刻な課題です。特に地方ではこの問題が顕著です。外国人材の活用、DX推進による業務効率化、国内人材の育成・確保など、長期的な視点での労働力対策が不可欠です。
全体として、日本のインバウンド市場は非常に好調なフェーズにありますが、この勢いを一過性のものとせず、真の観光立国を実現するためには、量的拡大だけでなく、質的向上と持続可能性を追求する戦略的な取り組みが不可欠です。市場の細かな動向を捉え、ターゲットに応じたきめ細やかなプロモーションを展開していくことが、今後の成功の鍵となるでしょう。
注釈