知らないと損する⁉東京のインバウンド集客で押さえる3つのデータ|2026年発表の最新動向
公開日: 2026年7月27日 | 更新日: 2026年7月27日
インバウンド需要が過去最高を更新し続けるなか、「とにかくバズれば集客できる!」という発想はすでに通用しなくなりつつあります。訪日客の消費単価が上がり、訪問先が特定エリアに集中し、リピーター比率が半数を超えた今、事業者に問われているのは「来てもらったあとに満足してもらえる受け皿があるか」です。
東京都が2026年6月に発表した「令和7年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査」は、この受け皿づくりを考えるうえで欠かせない一次データを提供しています。本記事では、調査結果のなかから事業者が施策に落とし込むべきポイントを整理し、集客の前に整えるべき「受け皿」の視点で解説します。
調査の概要
この調査は、羽田・成田空港の国際線ターミナル搭乗待合ロビーでアンケートを実施し、訪都外国人旅行者の属性・行動を国・地域別に集計したものです。令和7年(2025年)1月〜12月を対象とし、回答17,379票のうち「東京を訪問した」と回答した16,008票を集計対象としています。
サンプル数が1万6千を超える規模で、国・地域別の傾向まで追える点が、この調査を施策設計の基礎資料として使う価値を高めています。
ポイント1:消費単価は約20万円。「宿泊費」が伸びの中心
訪都外国人1人あたりの都内での旅行中支出額(推計値)は199,874円となり、令和6年の182,390円から9.6%増加しました。約20万円という水準は、単なる「安いから来る」旅行者像がもはや実態と合っていないことを示しています。
特に注目すべきは費目別の内訳です。最も支出が多いのは「宿泊費」で65,199円。令和6年の57,747円から12.9%増と、全体の伸び率を上回るペースで拡大しています。
| 項目 | 令和6年 | 令和7年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 1人あたり旅行中支出額 | 182,390円 | 199,874円 | +9.6% |
| うち宿泊費 | 57,747円 | 65,199円 | +12.9% |
事業者への示唆
宿泊費の伸びは、訪日客が「泊まる場所」により多くを支払う意欲を持っていることを意味します。宿泊事業者であれば単価を上げる余地があり、飲食・体験事業者であれば「高単価な宿泊客が周辺で何にお金を使うか」という発想で導線を設計する価値があります。安売りではなく、体験価値に見合った価格設定と、それを裏付けるサービス品質——つまり受け皿の質——が問われる局面です。
ポイント2:訪問先は「渋谷・銀座・東京駅周辺」に集中
訪問先は「渋谷」が60.3%で、令和4年から4年連続の1位となりました。2位は「銀座」が54.1%、3位は「東京駅周辺・丸の内・日本橋」が51.8%と続きます。さらに、調査対象の20の国・地域のうち台湾を除くすべてで「渋谷」が3位以内に入っており、国・地域を問わず訪問先が特定エリアに集中している構図が浮かび上がります。
| 順位 | 訪問先 | 訪問率 |
|---|---|---|
| 1位 | 渋谷 | 60.3% |
| 2位 | 銀座 | 54.1% |
| 3位 | 東京駅周辺・丸の内・日本橋 | 51.8% |
事業者への示唆
この「集中」は、上位エリア外の事業者にとって課題であると同時に機会でもあります。訪日客の動線が渋谷・銀座・東京駅周辺に偏っているということは、そこから外れたエリアの事業者は、「なぜわざわざ足を運ぶ価値があるのか」を能動的に発信しなければ埋もれてしまうということです。
逆に言えば、上位エリアはすでに競合過多です。まだ観光客の視線が十分に向いていないエリアで、体験価値・受け入れ品質・多言語対応をしっかり整えておけば、口コミやOTA・地図アプリのレビューを起点に「発見される」余地が大きく残されています。認知を広げる前に、来訪した人が満足して発信したくなる状態をつくる——この順序が重要です。
ポイント3:リピーターが半数超。「初回」と「再訪」で刺さる訴求は違う
訪都回数では、2回目以上(リピーター)が54.6%と半数を超えました。東京を訪れる外国人の過半数が、すでに一度は来たことのある「再訪客」だということです。
事業者への示唆
初回訪問客と再訪客では、求めるものが根本的に異なります。初回客は渋谷・銀座といった「定番」を押さえたい傾向が強い一方、再訪客は定番を一巡した先の、より深い・ローカルな体験を求めます。
過半数がリピーターという事実は、「定番から一歩外れた体験」を提供できる事業者にとって追い風です。忍者体験や食品サンプルづくりのような、東京ならではで、かつ渋谷・銀座の街歩きだけでは味わえない体験は、まさに再訪客の「次に何をしよう」という需要に応えるものです。
ここで立地の違いも施策に効いてきます。たとえば原宿のように上位訪問先である渋谷に隣接するエリアでは、すでにその近くまで来ている訪日客に「もう一歩足を延ばす理由」を提示できれば取り込みやすい。一方、動線から外れたエリアでは、来訪の前段階から「わざわざ訪れる価値」を発信し、口コミやレビューで発見される状態を整えておくことが不可欠です。同じ体験型コンテンツでも、立地が集中エリアに近いか遠いかで打ち手の重心は変わります。
自社の体験が初回客向けなのか再訪客向けなのか、そして立地が動線上にあるのか外れているのかを見極め、それに合わせて訴求メッセージと多言語コンテンツを設計することが、限られた予算を活かす鍵になります。
まとめ:データが示す「受け皿ファースト」の合理性
今回の東京都調査を通して見えてくるのは、インバウンド集客の勝負どころが「認知の量」から「受け皿の質」へと移っているという構造変化です。
調査が示す3つのポイント
- 消費単価は約20万円まで上昇し、なかでも宿泊費の伸びが顕著
- 訪問先は渋谷・銀座・東京駅周辺に集中し、それ以外のエリアは能動的な発信が不可欠
- 過半数がリピーターで、初回客と再訪客では刺さる訴求が異なる
これらはいずれも、「まず受け皿を整え、そのうえで適切な相手に発信する」というアプローチの合理性を裏付けています。多言語Web、SEO・MEO、OTA運用、SNS運用といった打ち手は、受け皿が整っていて初めて効果を最大化します。
自社のインバウンド施策が「認知先行」になっていないか、来訪した外国人が満足して発信したくなる状態が整っているか——このデータを機に、一度点検してみてはいかがでしょうか。
なお、東京に限らずインバウンド集客の全体像を整理したい場合は、インバウンド集客の基本と実践方法をまとめた記事もあわせてご覧ください。地域や業態を問わず使える考え方を、事例とともに解説しています。
※本記事は東京都産業労働局「令和7年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査結果」(2026年6月30日発表)の公表データに基づいて作成しています。数値は同調査の推計値です。