自治体のインバウンド対策|データで見る課題と進め方の順番

目次
地域に外国人の観光客を呼びたい。けれど、何から手をつければいいのか分からない。この記事は、そんな自治体や観光協会、DMOの担当者に向けたものです。
国の観光立国推進基本計画と観光庁のデータから、自治体のインバウンド対策の課題を整理し、取り組む順番を紹介します。
私たちMILOKUは、浅草で忍者体験カフェなどの体験型店舗を自社で運営しながら、セミナー参加・相談を含めて300社以上の自治体・事業者を支援してきました。代表・川名は人力車の車夫として、長年浅草に立ってきました。
- 国が自治体に求めていること
- データで見る、自治体の課題
- 取り組む順番:受け入れ → 見つけてもらう → 発信
- 【失敗例】フォロワー40万人でも、外国人客は増えなかった
- 自治体ならではの打ち手
- 成果の測り方
国が自治体に求めていること
2026年3月27日に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画は、2030年に訪日客6,000万人・消費額15兆円を目指しています。あわせて、「観光客の戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」に取り組む地域を100地域にする目標を掲げました。
人数を増やすだけでなく、地方にも来てもらい、住民の暮らしと両立させる。この3つを同時に進めることが、自治体に求められています。
2023年10月の「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」でも、次の3本柱が示されています。
- 過度の混雑やマナー違反への対応
- 地方部への誘客の推進
- 地域住民と協働した観光振興
データで見る、自治体の課題
訪日客は、まだ一部の都府県に集中している
観光庁の調査(2025年)で、訪日客が訪れた都道府県の割合(訪問率)を見ると、東京都50.8%、大阪府41.3%、千葉県35.1%、京都府29.7%の4都府県が飛び抜けています。5位の福岡県は11.0%です。

都道府県ごとのランキングは「外国人に人気の観光地ランキング」で詳しく紹介しています。
ただ、伸びているのは地方
外国人の延べ宿泊者数(2025年)は、東京・大阪・京都の3都府県で全国の57.6%を占めます。ただし前年からの伸びは、三大都市圏の+4.9%に対し、地方部は+15.5%でした。

地方の課題は「来てもらえない」から、「来た人を受け入れる準備が間に合うか」に移りつつあります。
旅行者が困るのは、言葉と支払い
観光庁の調査(令和7年度)で、訪日客がコミュニケーションに困った場所の38%は飲食店でした。カードで困った場所でも、飲食店が32%を占めます。
地域を訪れた人が最初につまずくのは、地域の飲食店や店舗です。自治体の対策は、観光地の整備だけでなく、地域の事業者の受け入れの準備まで含めて考える必要があります。
訪日客が困っていることの全体は「インバウンドの課題とは?」でまとめています。
取り組む順番:受け入れ → 見つけてもらう → 発信
| 順番 | やること | 内容 |
|---|---|---|
| 1. 受け入れ | 事業者の準備 | 外国語のメニュー・案内、キャッシュレス、予約の受け方。事業者向けの勉強会 |
| 2. 見つけてもらう | 検索と地図 | 外国語のサイト、Googleマップ、TripAdvisorなどの口コミサイト。地域の店や施設が外国語で見つかる状態にする |
| 3. 発信 | SNS・動画・広告 | 地域の魅力を動画で伝える。発信を見た人が検索したときに、2で整えた情報にたどり着ける |
出発前に役立った情報源を観光庁が聞いた調査(2025年)では、SNSが43.3%、動画サイトが39.6%でした。発信の力は大きいのですが、発信を先にすると、見た人の受け皿がありません。
基本的には全ての手法をやっていくことが大事。ただしここで大事になるのは、正しい順番で予算配分を間違えないこと。
【失敗例】フォロワー40万人でも、外国人客は増えなかった
私たちMILOKUが、ある体験事業のTikTokの運用を担当したときのことです。フォロワーは40万人まで増えました。それでも、外国人のお客様は増えませんでした。
これが一番大きな失敗だったなという案件でございます。
原因は、海外の旅行者の調べ方にあります。
SNSで人力車が回ってきたら、その後に「rickshaw(人力車)」で検索をかける。
動画を見た人は、店や施設の名前ではなく「rickshaw」のような一般名詞で検索します。そのときに地域の店や施設が検索結果やGoogleマップに出てこなければ、関心は他の地域に流れます。
自治体のプロモーションも同じです。動画で地域を知った人が「地名+食べ物」や「地名+体験」で調べたときに、地域の事業者の情報が外国語で見つかるか。ここを先に整えておく必要があります。
自治体ならではの打ち手
| 打ち手 | 内容 |
|---|---|
| 事業者向けの勉強会 | Googleマップの多言語化、口コミの集め方、外国語メニューなど、明日からできることを地域の事業者に伝える |
| 広域での連携 | 旅行者にとって、市町村の境目は関係ありません。近隣の自治体と組み、自然・食・体験を組み合わせた周遊を提案する |
| 住民との両立 | 混雑やマナーへの対応を先に決め、外国語の案内で旅行者にも伝える |
| 補助金の案内 | 事業者が使える国や都道府県の補助金を、地域でまとめて案内する |
事業者向けの勉強会:駒ヶ根商工会議所様(長野県)
私たちは駒ヶ根商工会議所様の主催で、地域の事業者を対象にしたインバウンド集客の講演会に登壇しました。Webマーケティング、SNS運用、海外向けの情報発信について、「明日からすぐに実践できる具体的なアクション」に絞ってお伝えしています。
▼事例の詳細
駒ヶ根商工会議所様主催のインバウンド集客講演会にて登壇
補助金で事業者の負担を軽くする
たとえば東京都の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」(令和8年度)は、多言語対応やキャッシュレス機器、外国人向けグルメサイトへの登録・掲載などが対象です。補助金の一覧は「インバウンド補助金【2026年度】」でまとめています。
成果の測り方
パンフレットの配布数やSNSの「いいね」だけでは、旅行者が地域に来てお金を使ったかは分かりません。次のような数字を定期的に見ると、どの施策が効いているかが分かります。
| 見る数字 | どこで見るか |
|---|---|
| 外国語サイトの閲覧と予約 | サイトのアクセス解析、予約システム |
| Googleマップでのルート検索・電話・サイトへの移動 | 各事業者のGoogleビジネスプロフィール |
| 外国語の口コミの数と評価 | Googleマップ、TripAdvisor |
| 外国人の宿泊者数 | 観光庁 宿泊旅行統計調査(都道府県別) |
よくある質問
Q. 自治体のインバウンド対策は、何から始めればいいですか。
A. 地域の事業者の受け入れの準備からです。外国語のメニューや案内、キャッシュレス、Googleマップの多言語化を整えたうえで、SNSや動画で発信します。順番が逆になると、発信を見た人が地域の情報にたどり着けません。
Q. 国はどんな目標を掲げていますか。
A. 第5次観光立国推進基本計画(2026年3月27日閣議決定)で、2030年に訪日客6,000万人・消費額15兆円、住民生活との両立に取り組む地域を100地域にする目標を掲げています。
Q. 地方に外国人は来ていますか。
A. 外国人の延べ宿泊者数は、東京・大阪・京都で全国の57.6%を占めます(2025年)。ただ、前年からの伸びは地方部が+15.5%で、三大都市圏の+4.9%を大きく上回っています。
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まとめ
国は2030年に訪日客6,000万人を目指し、地方への誘客と住民生活との両立を自治体に求めています。訪日客はまだ一部の都府県に集中していますが、伸びているのは地方です。
自治体のインバウンド対策は、地域の事業者の受け入れ、検索と地図で見つけてもらう準備、発信の順に進めましょう。
参考・出典
- 観光立国推進基本計画(2026年3月27日閣議決定)
- 観光庁 オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組(対策パッケージ 2023年10月18日)
- 観光庁 インバウンド消費動向調査 都道府県別集計 2025年
- 観光庁 宿泊旅行統計調査 2025年・年間値(速報値)(2026年2月27日公表)
- 観光庁 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート 令和7年度(2026年4月28日公表)
- 観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書(2026年3月31日公表)
