インバウンドの課題とは?観光庁の調査で見る、訪日客が困っていること

目次
2025年の訪日客は4,268万人で、過去最多になりました。受け入れる側の準備が追いついていない、という声も聞かれます。
では、インバウンドの課題とは具体的に何なのか。ここでは、訪日客自身が「困った」と答えたことを出発点に整理します。
私たちMILOKUは、浅草で忍者体験カフェなどの体験型店舗を自社で運営しながら、飲食店や体験施設、自治体のインバウンド集客を支援しています。現場で見えることもあわせてお伝えします。
先に結論です。
| 訪日客が困ったこと | 1位はごみ箱の少なさ(17.2%)。次いでスタッフとのコミュニケーション(15.4%)、混雑(12.9%) |
| 言葉の壁が出やすい場所 | 言葉で困った場所の38%が飲食店 |
| 地域の課題 | 外国人の宿泊は東京・大阪・京都に集中(57.6%)。ただし伸びは地方が速い |
| 国の方向 | 混雑・マナーへの対応、地方への誘客、住民と協働した観光 |
| 事業者ができること | 「分からない」をなくす。英語で先回りして伝え、支払いと翻訳の手段を用意する |
- 訪日客が旅行中に困ったこと
- 言葉の壁は、飲食店で起きやすい
- 都市への集中と、地方の伸び
- オーバーツーリズムと、国の対策
- 現場から見える課題:「分からない」が足を止める
- 事業者ができる課題解決
訪日客が旅行中に困ったこと
観光庁が訪日客に聞いた調査(令和7年度、4,110件、複数回答)では、旅行中に困ったことの上位は次のとおりでした。

1位はごみ箱の少なさ(17.2%)。2位のスタッフとのコミュニケーション(15.4%)、多言語表示(10.9%)、クレジット・デビットカード(10.7%)は、店や施設の側で手を打てる課題です。
なお、「困ったことはなかった」は43.7%でした。前年度(51.1%)より下がっていますが、令和7年度は選択肢が増えているため、困る人が増えたとは言い切れません。
言葉の壁は、飲食店で起きやすい
同じ調査で、コミュニケーションに困った場所を聞くと、飲食店が38%で最も多く、駅・バスターミナルが27%でした。困ったときの対応は、翻訳アプリなどICTツールが68%です。
カードで困った場所でも、飲食店は32%を占めます。言葉と支払いの両方で、飲食店は訪日客と最も多く接する場所です。
飲食店の受け入れ準備は「飲食店のインバウンド対策」で詳しく解説しています。
都市への集中と、地方の伸び
観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年)では、外国人の延べ宿泊者数のうち、東京・大阪・京都の3都府県で全国の57.6%を占めました。訪日客は大都市に集中しています。
ただ、伸び方は逆です。

三大都市圏の伸びが+4.9%だったのに対し、地方部は+15.5%と、約3倍の速さで伸びています。地方を訪れたい理由として、外国人の76%が「SNSや旅行サイトでの高評価、メディアでの紹介が多い訪問地を訪れたい」と答えた調査もあります(DBJ・JTBF、2025年)。
地方の課題は「来てもらえない」から、「来た人を受け入れる準備が間に合うか」に移りつつあります。
オーバーツーリズムと、国の対策
観光客が集中する一部の地域や時間帯では、過度の混雑やマナー違反による住民生活への影響が課題になっています。政府は2023年10月、オーバーツーリズムの対策パッケージをまとめ、次の3本柱を示しました。
- 過度の混雑やマナー違反への対応
- 地方部への誘客の推進
- 地域住民と協働した観光振興
対策の先駆モデル地域は全国で26地域あり、浅草を含む台東区は都内で唯一選ばれています。台東区では、持ち帰り用のごみ袋、4言語のマナーリーフレット、移動式ごみ箱の巡回などに取り組んでいます。
2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画では、2030年に訪日客6,000万人・消費額15兆円を目指すとともに、「観光客の戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」に取り組む地域を100地域にする目標が掲げられました。
浅草の事例も含めたオーバーツーリズムの詳しい解説は「オーバーツーリズムとは?」をご覧ください。
現場から見える課題:「分からない」が足を止める
私たちMILOKUは、英語のYouTube動画のコメントを集め、外国人旅行者が日本旅行について何を語っているかを調べました(読み取りと分類は AI(Claude)で行い、無作為の30件を代表・川名が確かめています)。
そこで目立ったのは、値段の高さより「分からないこと」で足が止まっている声でした。
| テーマ | 英語コメントに出てきた「分からない」 |
|---|---|
| 飲食店 | 言葉・作法・気後れ・注文・メニューなど「店への入り方」の困りごとが35件(外食の話116件中) |
| 着物 | 「失礼にならないか不安」が15件(着物の話264件中) |
| 夜の浅草 | 「何時まで開いている?」という質問が5件(夜・早朝の浅草の話44件中) |
| 旅行全体 | 困った・苦労した経験115件のうち、交通が40件で最多 |
観光庁の調査でコミュニケーションや多言語表示が上位にあるのも、同じことの表れだと私たちは見ています。外国人のお客様は、知らないことに不安を感じて、店に入るのをためらいます。
事業者ができる課題解決
観光庁の「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」は、観光地で店舗を運営する事業者も対象で、補助率は2分の1以内、公募は2027年1月29日まで(予算がなくなり次第終了)です。ほかの補助金も含めて「インバウンド補助金【2026年度】」にまとめています。
▶
◀
▶
◀
よくある質問
Q. インバウンドの課題で、いちばん多いものは何ですか。
A. 観光庁の調査(令和7年度)で訪日客が旅行中に困ったことの1位は、ごみ箱の少なさ(17.2%)でした。次いでスタッフとのコミュニケーション(15.4%)、観光地や地域の混雑(12.9%)です。
Q. 飲食店が抱えやすい課題は何ですか。
A. 言葉と支払いです。言葉で困った場所の38%、カードで困った場所の32%が飲食店でした。メニューや注文の仕方を外国語で示し、キャッシュレスに対応することが課題解決の近道です。
Q. 地方のインバウンドの課題は何ですか。
A. 外国人の宿泊はまだ東京・大阪・京都に集中していますが、地方部の伸びは+15.5%と、三大都市圏の約3倍です。来た人を受け入れる準備が間に合うかが課題になりつつあります。
Q. 国はどんな対策をしていますか。
A. 2023年のオーバーツーリズム対策パッケージで、混雑・マナーへの対応、地方への誘客、住民と協働した観光振興の3本柱を示しています。2026年の第5次観光立国推進基本計画では、住民生活との両立に取り組む地域を100地域にする目標もあります。
▼支援事例
駒ヶ根商工会議所様主催のインバウンド集客講演会にて登壇
▼MILOKUの支援サービス
インバウンドコンサルティング
まとめ
インバウンドの課題は、訪日客の側から見ると、ごみ箱、言葉、混雑、支払いといった身近なことです。特に飲食店は、言葉と支払いの両方で訪日客と最も多く接する場所になっています。
地域としては都市への集中が続く一方、地方の伸びは速く、受け入れの準備が追いつくかが問われています。事業者ができる課題解決の第一歩は、外国人のお客様の「分からない」に、英語で先回りして答えることです。
参考・出典
- 観光庁 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート 令和7年度(2026年4月28日公表)
- 観光庁 宿泊旅行統計調査 2025年・年間値(速報値)(2026年2月27日公表)
- DBJ・JTBF 訪日外国人旅行者の意向調査 2025年度版(2025年11月6日)
- 観光庁 オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組/対策パッケージ(2023年10月18日)
- 台東区プレスリリース(2024年11月26日)
- 観光立国推進基本計画(2026年3月27日閣議決定)
- 観光庁 地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業
- MILOKU調べ:英語のYouTubeコメントの独自調査(2026年10月取得)
