飲食店のインバウンド対策|外国人客が困ることと受け入れ準備

目次
外国人のお客様が増えてきた。でも、英語は話せないし、何から準備すればいいか分からない。
飲食店のインバウンド対策というと、多言語のホームページや広告を思い浮かべるかもしれません。ただ、お客様が店で本当に困っているのは、もっと身近なことです。
この記事では、訪日客が実際に困っていることを観光庁の調査から確かめ、そこから逆算して、店でできる受け入れ準備をまとめました。私たちMILOKUは、浅草で忍者体験カフェなどの体験型店舗を自社で運営し、飲食店のインバウンド集客を支援しています。現場で見てきたことも、あわせてお伝えします。
先に結論です。
| 訪日客が困っていること | スタッフとのコミュニケーション15.4%、多言語表示10.9%、カード10.7%(観光庁) |
| 飲食店が多い困りごと | 言葉で困った場所の38%、カードで困った場所の32%が飲食店 |
| まずやること | メニュー(写真・税込料金・英語名・原材料)と、注文・支払いの案内 |
| やってはいけないこと | 機械翻訳だけのメニュー、外国人向けに振り切った店づくり、口コミの返礼品 |
- 飲食店にインバウンド対策が必要な理由
- 訪日客が飲食店で困っていること(観光庁の調査と、英語コメントの独自調査)
- 店でできる受け入れ準備7つ
- 使える補助金
- 失敗しやすい落とし穴
- 支援先の実例
飲食店にインバウンド対策が必要な理由
2025年に訪日客が日本で使ったお金は9兆4,549億円で、過去最高でした。そのうち飲食費は21.9%を占めています(観光庁「インバウンド消費動向調査」、2026年3月31日発表)。
訪日客が日本でいちばん満足した食事は、肉料理、ラーメン、寿司の順でした。満足した理由のトップは「美味しい」(94.4%)です。

料理の味は、日本の飲食店の大きな強みです。ただ、美味しい料理があっても、入り方や注文の仕方が分からなければ、選んでもらえません。そこを整えるのが、飲食店のインバウンド対策です。
訪日客が飲食店で困っていること
観光庁の調査:言葉・表示・支払い
観光庁が空港で訪日客に聞いた調査では、旅行中に困ったことの上位に、店で解決できるものが3つ入っていました。

困った場所を見ると、言葉でもカードでも、飲食店が多く挙がっています。言葉で困った場所では、飲食店(38%)が駅・バスターミナル(27%)を上回っていました。

英語のコメントで多いのは「入り方」の困りごと
私たちは、日本の飲食店を紹介する英語のYouTube動画39本に付いたコメントを集め、無作為に600件を読みました。日本での外食に触れていた116件のうち、困りごとで多かったのは、言葉(14件)、箸やおしぼりなどのマナー(13件)、入りにくさ(8件)でした。

また、菜食などの食事制限に触れたコメント44件のうち15件は、「だしや原材料が見て分からない」という声でした。
調査の限界:コメントを書くのは動画の視聴者で、訪日客全体の代表ではありません。分類は私たちが行い、代表・川名が無作為の30件を確認して、30件すべてが一致しました。
私たちの調査から見えるのは、外国人のお客様を困らせているのが「高いこと」より「分からないこと」だということ。
何があって、いくらで、どう頼んで、どう食べればいいか。それが伝われば、入りやすい店になります。
店でできる受け入れ準備7つ
1. メニュー|写真・税込の料金・英語名・原材料
メニューは、いちばん効果の大きい準備です。
- 料理の写真をつける
- 税込の料金を書く
- 英語の名前を添える(直訳ではなく、どんな料理か伝わる言葉で)
- 主な原材料(豚肉・牛肉・魚・だしなど)を書く
辛子明太子。明太子を海外向けに直訳すると「魚の卵」みたいな表現になる。すごく美味しくなさそうなんですよ。
2. 注文と食べ方を案内する
入口やテーブルに、英語で一言、注文の仕方を書いておきましょう。「食券を買ってから席に着く」「タッチパネルで注文する」「おすすめの食べ方」など、日本人には当たり前のことが、外国人には分かりません。
3. 支払い|キャッシュレスを用意する
カードで困った場所の32%が飲食店でした。クレジットカードやQRコード決済など、複数の支払い方法を用意し、入口やレジに使える支払い方法を表示しておきましょう。
4. 接客|英語が話せなくても、黙らない
英語が話せないことを心配する方は多いですが、いちばん避けたいのは別のことです。
1番ダメなのは何も喋らないことでございます。英語が喋れない場合でも丁寧に一生懸命話す。一生懸命話されて嫌がる人はいませんので。
翻訳アプリや、指差しで使える会話シートがあれば十分です。代表・川名は人力車の現場で、英語も台湾の言葉も話せないまま、台湾から新婚旅行で来たご夫婦を案内したことがあります。言葉は最後まで通じませんでしたが、身振りで必死に伝え、とても喜んでもらえました。
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5. 食の制限に配慮する
代表・川名が人力車の車夫をしていたころ、外国人のお客様から実際に「ハラール対応について」聞かれたことがありました。宗教や菜食、アレルギーで食べられないものがあるお客様は、実際にいます。
すべてに対応する必要はありません。まずは、メニューに主な原材料を書くことから始めましょう。豚肉・アルコール・だし(魚や肉)を使っているかが分かるだけでも、お客様は自分で選べます。
6. 写真|外国人だけでなく、日本人のお客様も
店内やGoogleマップに載せる写真は、外国人のお客様だけにしないことが大切です。
外国人だけしか来てないよって見せ方はあんまり好ましくない。日本人の写真を載せることによって地元の人も来てるよっていう雰囲気も作れる。
代表・川名が人力車のお客様から聞かれた質問には、「美味しいチェーン店を教えて」というものもありました。外国人のお客様は、観光客向けの店より、地元の人が普段行く店を知りたがっています。
7. Wi-Fiと案内表示
旅行者は、翻訳アプリや地図を使うためにネットにつながる環境を必要としています。Wi-Fiがあるなら、パスワードと一緒に入口や席に表示しておきましょう。トイレや支払い方法の案内も、英語を添えるだけで伝わりやすくなります。
来てもらうための準備は、Googleマップから
店での受け入れが整ったら、外国人のお客様に見つけてもらう準備です。私たちの見方では、外国人のお客様が店を決める直前に見るのはGoogleマップです。まずはGoogleビジネスプロフィールを整えましょう。
- 説明文と最新情報(投稿)は、外国語に自動で翻訳されないので、英語でも書く
- メニューに写真と税込の料金を載せる
- 営業時間を正確にする(「行ったのに閉まっていた」は低評価の口コミの典型)
詳しくは「飲食店のMEO対策とは?」と「インバウンドMEO対策とは?」で解説しています。
使える補助金
東京都内の飲食店なら、東京都の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」が使える可能性があります。メニューやホームページの多言語化は補助率3分の2、上限は1施設300万円です(2026年度)。外国人向けグルメサイトへの掲載、Wi-Fi、キャッシュレス機器なども対象です。
飲食店が申請するときは、東京都の「EAT 東京」にある外国語メニューがある飲食店検索サイトに掲載済みであることが必要です。また、交付決定より前に発注した費用は補助されません。
詳しくは「インバウンド補助金【2026年度】」でまとめています。
失敗しやすい落とし穴
| 落とし穴 | なぜ失敗するか |
|---|---|
| 機械翻訳だけのメニュー | 料理の魅力が伝わらない。「魚の卵」のように、おいしそうに見えないことも |
| 外国人向けに振り切る | 地元の人が来なくなり、外国人にとっての「日本らしさ」も薄れる |
| 現金のみ | カードで困った場所の32%が飲食店。支払えないと、入る前にあきらめられる |
| 値段が分からない | 外国人は、入る前に値段を確かめたい |
| 口コミと引き換えの返礼品 | Googleのポリシー違反。ステルスマーケティング規制の対象にもなり得る |
支援先の実例
| 店 | 取り組み | 結果 |
|---|---|---|
| 更科天狐様(そば・天ぷら) | Googleビジネスプロフィールの多言語化、料理の写真の設計、口コミの運用 | Googleでの検索数 623件→19,780件、電話 約21.3倍(前年同期比) |
| 浅草の飲食店K様 | 口コミの運用 | Googleの口コミ 20件→320件(2026年8月末時点) |
| 浅草うどん様 | 口コミの運用、トリップアドバイザー対策 | トリップアドバイザー 473位→2位(浅草のレストラン1,000軒以上の中で) |
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よくある質問
Q. 飲食店のインバウンド対策は何から始めればいいですか。
A. メニューから始めるのがおすすめです。料理の写真、税込の料金、英語の名前、主な原材料を載せます。観光庁の調査では、言葉で困った場所の38%が飲食店でした。
Q. 英語が話せなくても大丈夫ですか。
A. 大丈夫です。いちばん避けたいのは、何も話さないことです。翻訳アプリや指差しの会話シートを使って、伝えようとしてください。
Q. キャッシュレス決済は必要ですか。
A. 用意することをおすすめします。観光庁の調査では、カードで困った場所の32%が飲食店でした。使える支払い方法を入口やレジに表示しておきましょう。
Q. ハラールやヴィーガンにはどこまで対応すればいいですか。
A. すべてに対応する必要はありません。まずはメニューに主な原材料(豚肉・アルコール・だしなど)を書きましょう。お客様が自分で選べるようになります。
Q. 飲食店のインバウンド対策に使える補助金はありますか。
A. 東京都内なら、東京都の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」で、メニューの多言語化(補助率3分の2)やキャッシュレス機器の導入などが対象になります。交付決定より前に発注した費用は補助されないので注意してください。
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まとめ
| ポイント | |
|---|---|
| 訪日客が困っていること | 言葉・表示・支払い。困った場所で多いのは飲食店(言葉38%、カード32%) |
| まずやること | メニュー(写真・税込料金・英語名・原材料) |
| 次にやること | 注文と食べ方の案内、キャッシュレスと表示、黙らない接客 |
| 気をつけること | 外国人向けに振り切らない。日本人のお客様も大切に |
飲食店のインバウンド対策は、特別な設備より、「分からない」を減らすことから始まります。
私たちMILOKUでは、実際の支援で使っているインバウンドMEO対策チェックリストを無料でお配りしています(メールアドレスの登録だけでダウンロードできます)。
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