円安でインバウンドはどう変わった?消費額のデータと事業者の対策

目次
「円安だから、外国人のお客さんはたくさんお金を使ってくれるはず」。そう考えている事業者の方は多いと思います。
半分は当たっています。2025年の訪日客数と旅行消費額は、どちらも過去最高でした。ただ、1人当たりの旅行支出は前年比+0.9%で、ほぼ横ばいです。中国・香港・韓国・台湾といった近いアジアの国・地域では、むしろ減っています。
私たちMILOKUは、グループで浅草の忍者体験カフェなどの体験型店舗を運営しながら、飲食店や体験施設のインバウンド集客を支援しています。この記事では、観光庁・JNTOの統計とビッグマック指数を使って、円安がインバウンドに何をもたらしたのかを整理します。
先に結論です。
| 円安の度合い | 1ドル78.4円(2011年7月)→ 162.1円(2026年7月)。1ドルで買える円は約2.1倍 |
| 増えたもの | 訪日客数(2025年 4,268万人、+15.8%)と旅行消費額(9兆4,549億円、+16.4%) |
| 増えていないもの | 1人当たり旅行支出(+0.9%)。近いアジアの国・地域では減少 |
| 事業者がやること | 「安いから来るお客さん」頼みにせず、選ばれる理由と受け皿を整える |
- 円安はどこまで進んだか(為替とビッグマック)
- 訪日客と消費額は過去最高
- ただし、1人当たりの支出はほぼ横ばい
- 国によって逆の動き(近いアジアは減り、欧米豪は増えた)
- 2026年は「人数が減っても、消費額は横ばい」
- 円高に振れたら、どうなるか
- 事業者がいまやること
円安はどこまで進んだか
The Economist が公開しているビッグマック指数のデータ(各年7月の為替)では、1ドルは2011年に78.4円、2021年に109.9円、2026年に162.1円でした。15年で、1ドルで買える円は約2.1倍になっています。

ビッグマックで見る「安い日本」
為替だけでは、旅行者にとってどれくらい安く感じるのかが分かりにくいので、世界中でほぼ同じ商品として売られているビッグマックの値段で比べてみます。
2026年7月、日本のビッグマックは500円=3.08ドルです。米国(6.22ドル)より50.4%安く、54か国中48位でした。中国(3.91ドル)や韓国(3.84ドル)よりも安く、日本より安いのは台湾(2.42ドル)などに限られます。

15年前は逆でした。2011年7月の日本は320円=4.08ドルで、米国より12.2%高い国でした。2012年7月までは米国より高く、2013年1月以降はずっと米国より安くなっています。
外国人旅行者から見ると、日本は「物価の高い国」から「割安な国」に変わりました。詳しくは「ビッグマック指数ランキング2026」で解説しています。
訪日客と消費額は、過去最高
2025年の訪日外客数は4,268万人(前年比15.8%増)で、初めて4,000万人を超えました(JNTO、2026年1月21日公表)。
旅行消費額は9兆4,549億円(前年比16.4%増)で、こちらも過去最高です(観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書)。費目別では、宿泊費が36.6%、買物代が27.0%、飲食費が21.9%を占めます。
年別・月別の推移は「訪日外国人の推移」にまとめています。
ただし、1人当たりの支出はほぼ横ばい
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
2025年の訪日外国人(一般客)1人当たりの旅行支出は22.9万円で、前年比+0.9%でした。消費額が16.4%伸びたのは、主に人数が増えたからです。

このデータからは、「円安で1人が使う額が大きく増えた」とは言えません。
円安は日本を割安な旅行先にしましたが、伸びたのは「来る人の数」のほうでした。
国によって、逆の動き
国・地域別に見ると、さらにはっきりします。

2025年の1人当たり旅行支出は、中国−10.9%、香港−9.2%、韓国−3.7%、台湾−1.7%と、近いアジアで減りました。 一方、米国+2.3%、英国+2.6%、オーストラリア+1.6%、ドイツ+17.8%と、欧米豪では増えています。
中国は、旅行者数が前年比31.0%増えました。しかし、1人当たりの支出は10.9%減っています。
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2026年は「人数が減っても、消費額は横ばい」
2026年に入ると、別の動きが出ています。
観光庁の2026年4-6月期(2次速報、2026年9月30日発表)では、訪日外国人の旅行者数は前年同期比で5.3%減りました。それでも、旅行消費額は2兆5,125億円で0.3%増と、ほぼ前年並みを保っています。1人当たりの旅行支出は24万5千円でした。
国別では、中国の消費額が2,635億円で、前年同期の5,064億円からほぼ半分になりました。代わりに、米国が3,860億円(構成比15.4%)で1位、台湾が3,618億円で続いています。
中国の動きについては「中国インバウンドの集客」で詳しく扱っています。
浅草の現場で見えたこと
ここまでは全国の平均です。浅草の人力車の現場では、次のような変化がありました。
円安になってから、実際、外国人のお客様の使う金額は大きく変わったなと思っています。
人力車でいうと、5,000円から2万円まで、10分から1時間という形で料金が決まっているんですけども、明らかに円安に振れてから、長いコースに乗るお客様は増えたなという印象がありました。
一方で、国の顔ぶれでいうと、以前はアジア圏の方々は乗らなかったりすることもあったんですが、円安になってからは乗る回数が増えたなと感じております。
人力車というのはそもそもなかなか高い商品ですが、それを乗れるという方が増えたというのは、円安の影響は確かにあると思っております。
実際、人力車の会社もですね、円安になってから金額を上げました。元は1時間コースなんかも1万8,000円だったのが、2万円になった経緯もございます。
円高に振れたら、どうなるか
為替は動きます。円安が日本を割安な旅行先にしている以上、円高に振れれば、その割安感は薄れます。
円高に戻ったら、一部で苦戦するお店は当然出てくると思います。とはいえ、それは限定的な影響かなと思っていて、なぜなら円安になる前からお客様は全然いらっしゃっていた印象がありますので、円高になったら一時的に減ったり、消費額が減ったりすることはあるかもしれませんが、長期的に見れば、そこまで大きな影響はないのかなと考えています。
ただ、2025年のデータで1人当たりの支出を伸ばしたのは、欧米豪の旅行者でした。私たちは、「安さ」だけで選ばれている店ほど為替の影響を受けやすく、「ここでしかできない体験」や「選ばれる理由」がある店ほど影響を受けにくいと考えています。
円安のいまは、追い風に乗るだけでなく、為替が戻っても選ばれる理由をつくっておく時期です。
事業者がいまやること
単価の上げ方は「インバウンドの客単価を上げる方法」、集客の全体像は「インバウンド集客の方法9選」、補助金は「インバウンド補助金【2026年度】」で解説しています。
よくある質問
Q. 円安でインバウンドは増えましたか。
A. 2025年の訪日客数は4,268万人、旅行消費額は9兆4,549億円で、どちらも過去最高でした。ただし、為替以外の要因もあるため、円安だけの効果とは言い切れません。
Q. 円安で、外国人観光客1人当たりの支出は増えましたか。
A. 2025年の1人当たり旅行支出は22.9万円で、前年比+0.9%とほぼ横ばいでした。中国・香港・韓国・台湾では減り、米国・英国・オーストラリア・ドイツでは増えています。
Q. 円高になったら、インバウンドは減りますか。
A. 先のことは予測できません。円高に振れれば日本の割安感は薄れますが、「安さ」以外の理由で選ばれている店ほど影響は小さいと考えています。
Q. 事業者はまず何をすればいいですか。
A. どの国のお客さんが来ていて、何にお金を使っているかを確かめることです。そのうえで、選ばれる理由を外国語で伝え、Googleマップなど直接予約の受け皿を整えてください。
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まとめ
円安で、日本は外国人旅行者にとって割安な国になりました。訪日客数と旅行消費額は過去最高です。
ただ、1人当たりの支出はほぼ横ばいで、近いアジアの国・地域では減っています。2026年は、人数が減っても消費額が前年並みを保つ一方、国別の顔ぶれが変わり始めています。
円安の追い風があるいまこそ、「安いから来るお客さん」に頼らず、為替が戻っても選ばれる理由と、直接予約の受け皿を整えておくことをおすすめします。
参考・出典
- JNTO 訪日外客数(2025年12月推計値)(2026年1月21日公表)
- 観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書
- 観光庁 インバウンド消費動向調査 2026年4-6月期(2次速報)(2026年9月30日発表)
- The Economist ビッグマック指数データ(2026年7月)

