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インバウンドの客単価を上げる方法|値上げせずに単価が上がる順番

目次
  1. 1. なぜ今、客数ではなく客単価なのか
  2. 客数は、もう自力で増やすものではありません
  3. 2. 【最重要】上げる前に、手数料を確認してください
  4. 3分でできる確認
  5. 3. 値上げせずに単価が上がる、3つの仕組み
  6. ① 選ばせる(松竹梅)
  7. ② 足す(セット化)
  8. ③ 伝える(同じ商品の価値を上げる)
  9. 4. 【現場】押して売ると、単価は下がります
  10. 「高い」と言われたら、共感して下のコースを出す
  11. 売れる車夫と、売れない車夫の差
  12. 5. 言葉が通じなくても、単価は上がります
  13. 6. モノ消費から、コト消費へ
  14. 7. 単価を落としている「見えない障害」
  15. 使えるツールとサービス
  16. 8. 数字の測り方
  17. 毎月、この3つだけ記録してください
  18. 9. やらなくていいこと
  19. 10. 業種別の、最初の一手
  20. 11. よくある質問
  21. まとめ
  22. あわせて読む

外国人のお客様は増えている。それなのに、売上がそれほど変わらない——。

それは客数ではなく、客単価の問題です。 訪日外国人の数が増えても、1人あたりの売上が変わらなければ、ビジネスは伸びません。

私たちMILOKUは、浅草で忍者体験カフェなどを自社運営しています。代表の川名は、その前は人力車の車夫として、対面でお客様に料金を提示する仕事をしていました。自分の店の売上でこの問題に向き合っている立場から書きます。

この記事の結論
  1. 客単価アップは「値上げ」ではありません。 値上げから入ると、客数が落ちて売上は下がります
  2. 単価を上げる前に、手数料を確認してください。 上げた分が外部に消えているケースが非常に多い
  3. 押して売ると、単価はむしろ下がります。 これは現場で繰り返し見てきたことです

1. なぜ今、客数ではなく客単価なのか

まず前提の数字です。

2025年の訪日外客数
4,268万人
前年比15.8%増・初の4,000万人超
2025年の旅行消費額
9兆4,549億円
前年比16.4%増・過去最高
訪日客1人あたりの旅行支出
22万9千円
前年比0.9%増

出典:JNTO 訪日外客数/観光庁 消費動向調査

注目すべきは3つ目です。1人あたり22万9千円。 このうち、あなたの店に落ちているのはいくらでしょうか。

客数は、もう自力で増やすものではありません

訪日客の数は、事業者が努力しなくても増えています。街には人があふれています。

しかし客数を追うと、こうなります。

客数を追うと 客単価を上げると
席数・スタッフ数の上限にすぐ当たる 同じ人数でも売上が伸びる
忙しくなるが、利益は増えにくい 忙しさは変わらない
混雑で満足度が下がる 丁寧に接客できるので満足度が上がる
広告費がかかり続ける 一度仕組みを作れば続く
客単価は「割り算」です

客単価 = 売上 ÷ 客数。 分子を増やすか、分母を減らすか。
客数を減らす選択肢は現実的ではないので、分子をどう増やすかの話になります。


2. 【最重要】上げる前に、手数料を確認してください

ここを飛ばして単価を上げても、増えた分が外部に消えます。

これは私たち自身が経験している話です。

代表・川名

自社の体験を予約サイトに載せる際、コミッション30%を提示されたことがあります。
5,000円の体験を売って、手元に残るのは3,500円。
そこから人件費と材料費を引くと、何のためにやっているのか分からなくなります。

単価を5,000円から7,000円に上げても、手数料30%なら手元に残るのは4,900円です。 上げ幅の3割が消えます。

3分でできる確認

数字を3つ書き出してください

□ 直近1ヶ月の売上のうち、予約サイト経由はいくらか
□ その予約サイトの手数料は何%か
□ 掛け算した金額が、毎月外部に払っている額

月100万円が予約サイト経由で手数料20%なら、毎月20万円・年間240万円です。

順番が逆になっている店が非常に多い

手数料の確認 → 直販の比率を上げる → そのうえで単価を上げる。
この順番でないと、努力の何割かが自動的に外へ出ていきます。


3. 値上げせずに単価が上がる、3つの仕組み

「単価を上げる=値上げ」ではありません。同じ価格でも、単価は上がります。

① 選ばせる(松竹梅)

1種類しかない商品は、買うか買わないかの二択になります。3段階あると、どれにするかの三択に変わります。

選択肢の数 起きること
1つ 「買う/買わない」の判断。断られたら終わり
3つ 「どれにするか」の判断。真ん中が選ばれやすい
5つ以上 迷って決められない。離脱します

3つが最適です。 そして真ん中を、いちばん売りたい価格に置きます。

② 足す(セット化)

単品で売っているものを、組み合わせて出します。

単品で売る セットにする
体験のみ 体験+記念写真のデータ
料理のみ 料理+ドリンク+デザート
商品のみ 商品+名入れ+ギフト包装
見学のみ 見学+実演+お土産
外国人客に特に効くのは「持ち帰れるもの」

写真・動画・名入れ。 旅行の記憶を形にして持ち帰れるものは、価格に関係なく選ばれます。
しかもSNSで共有されるため、次の集客にもつながります。

③ 伝える(同じ商品の価値を上げる)

まったく同じ商品でも、書き方で単価は変わります。

私たちが実際に立ち会った例です。

代表・川名

辛子明太子。明太子を海外向けに直訳すると「魚の卵」みたいな表現になるんです。
すごく美味しくなさそうなんですよ。

人の手を入れて 「博多スパイシーキャビア」 と表現し直したところ、反応がまったく変わりました。キャビアという既知の高級食材に接続することで、未知の食べ物が「試してみたいもの」に変わったわけです。

伝わらない書き方 伝わる書き方
直訳した料理名 既知のものに例える
「老舗」 「創業◯年」「浅草寺から徒歩3分」
「厳選素材」 産地名・生産者名・数量限定
「職人が丁寧に」 「1つ作るのに◯分」

「老舗」という概念は英語圏にありません。 創業年数か、有名な目印との位置関係に置き換えるほうが伝わります。


4. 【現場】押して売ると、単価は下がります

ここが、他社の記事と最も違う部分です。

多くの記事は「アップセルのテクニック」を勧めます。しかし人力車の現場で繰り返し見てきたのは、逆のことでした。

「高い」と言われたら、共感して下のコースを出す

代表・川名

正直高いですよね、っていうふうに共感してあげるようにしていました。
無理にそのコースを売るんじゃなくて、一番安いコースを素直に提案することをやっておりました。

反論しない。押さない。共感して、下のコースを出す。

一見、単価を下げる行為に見えます。しかし——

なぜこれで結果的に単価が上がるのか

押された相手は、買わずに立ち去ります。 ゼロ円です。
共感して下のコースを出せば、まず乗ってもらえます。 そして乗った後で、
「もっと長いコースにすればよかった」と言われることが実際にあります。

最初の1回を成立させることが、単価の話より先です。

売れる車夫と、売れない車夫の差

同じ商品を、同じ場所で売っているのに、差がつきます。理由は明確でした。

代表・川名

要は、自分の人力車が面白いと自分で思っている。
自分が商品なので、自分の商品性が高いと思っている車夫に関しては売ることができていました。
案内が面白い人ほど売れている。

自分の商品に自信がない人は、高い価格を提示できません。 これは技術ではなく、商品そのものの問題です。

価格を言うときに目を逸らしていませんか

スタッフが料金を伝えるときの態度は、そのまま伝わります。
申し訳なさそうに言えば「高いのだな」と受け取られます。
値付けに納得できていないなら、まず商品を見直してください。


5. 言葉が通じなくても、単価は上がります

「英語が話せないから高いものは売れない」——これも違います。

代表・川名が人力車のマーケティング担当だった頃の話です。女性の車夫が途中で怪我をしたと連絡が入り、代わりに走れる人間がいませんでした。川名が代打で現場へ向かいます。

乗っていたのは、台湾から新婚旅行で来ていたご夫婦でした。

代表・川名

足を怪我した車夫が目の前にいて、不安そうに乗ってるお客さん2人がいて、
新婚旅行で来ているっていう。そういった場面でもなんとかしなきゃいけない。

川名は英語も台湾語も話せません。知っている限りの言葉とジェスチャーで、必死にコミュニケーションを取りました。

言葉は最後まで通じませんでした。それでも、とても喜んでいただけました。

案内を中断してしまったので料金を返そうとしたところ、受け取ってもらえませんでした。それどころか、チップまで渡されました。

単価を決めているのは、語学力ではありません

体験の質です。 言葉が通じなくても、必死に向き合えば伝わります。
逆に、流暢な英語で淡々と接客しても、チップは渡されません。

「英語ができないから」は、単価を上げない理由になりません。


6. モノ消費から、コト消費へ

需要そのものが変わっています。買い物中心から、体験中心へ。 モノを提供するサービスから、時間と記憶を提供するサービスへ、価値の置き所が移っています。

自社の忍者体験カフェも、食事を出すだけの店ではありません。本格的な忍者体験というコンテンツがあるから、単価が成立しています。

業種 単価が上がらない売り方 単価が上がる売り方
飲食 料理を出す 作る工程を見せる・体験させる
物販 商品を並べる 由来を説明する。名入れをする
宿泊 部屋を貸す 地域の体験とセットにする
体験 単発で売る 写真・動画を持ち帰らせる
サロン 施術する 日本ならではの施術を前面に出す
意外なこと:日本人に受けないものが、外国人に受ける

人力車の案内には浅草の歴史というテーマがあります。
ところが、日本人の若い層はあまり興味を示しません。外国人のほうが強く反応します。

「日本人には地味すぎる」と自分たちで判断して外しているものが、
実は最も価値のあるコンテンツかもしれません。


7. 単価を落としている「見えない障害」

いい商品を用意しても、手前で止まっているケースがあります。単価以前の問題です。

障害 何が起きているか 対応
現金しか使えない 高額な商品ほど選ばれません クレジットカード、Alipay・WeChat Pay
免税対応が不明 訪日外国人は数量をためらいます 対応の有無を明記する(未対応なら「未対応」と書く)
料金が書いていない 「時価」「応相談」は候補から外れます 税込総額で表示(¥5,500 tax incl.)
所要時間が不明 旅程が読めず、上位コースを選べません コースごとに分単位で
写真がない 何が出てくるか分からず、安い方を選びます 売りたい商品ほど写真を大きく
「上位コースが売れない」の原因は、たいてい情報不足です

高いコースほど、中身が分からないと選ばれません。
下位コースとの違いを、写真と所要時間で見える化してください。文章では読まれません。

使えるツールとサービス

高額な仕組みは要りません。すでにあるものを活用すれば足ります。

目的 手段
多言語のメニュー提示 タブレット or 紙+写真。翻訳アプリで十分
決済の多様化 主要な決済サービスをまとめて導入できる端末
在庫と予約の一元管理 Bokun など。私たちの体験施設でも使っています
情報の発信 Googleビジネスプロフィール。無料
効果測定 同上のパフォーマンス画面。無料
ツールを増やす前に、書くことを済ませてください

料金・所要時間・決済手段の明記は費用ゼロです。
ここを飛ばしてツールに投資しても、単価は上がりません。


8. 数字の測り方

感覚ではなく、数字で追います。分解すると、どこを触ればいいかが分かります。 売上向上のポイントは、この式のどちらを動かすかにあります。

客単価 = 商品単価 × 購入点数

どちらを動かすか 打ち手
商品単価を上げる 松竹梅の設計、価値の伝え方、上位コースの用意
購入点数を増やす セット化、追加提案、持ち帰り商品

毎月、この3つだけ記録してください

1
客単価
売上 ÷ 客数。外国人客だけを分けて出すのが理想です
▼
2
外部に払った手数料
予約サイト・ポータルの合計。減っていれば成功
▼
3
セット・上位コースの構成比
全体の何%がセットで売れているか
売上だけを見ないでください

売上は季節や天候でも動きます。客単価と手数料——この2つが、
施策の成否が最も素直に出る指標です。月に1回、記録するだけで十分です。


9. やらなくていいこと

売り物を否定できるのは、他に売るものがある会社だけです。

優先度が低い、または逆効果になるもの

□ 一律の値上げ — 価値の伝え方を変えずに価格だけ上げると、客数が落ちます
□ 高額コースの押し売り — 押された相手は買わずに立ち去ります
□ 全メニューの多言語化 — まず売りたい3品だけ。残りは写真で足ります
□ 選択肢を5つ以上に増やす — 迷って決められず、離脱します
□ 手数料の確認をせずに単価を上げる — 上げ幅の3割が消えることがあります
□ 「高いですよね」への反論 — 共感して下の選択肢を出すほうが成立します


10. 業種別の、最初の一手

300社以上を支援してきた中で、業種によって効きどころが違います。

業種 最初にやること 期待できること
飲食店 売りたい3品に英語名と写真をつける 注文の集中。単価の高い品が出る
宿泊施設 地域の体験とのセットプラン 1泊あたりの単価。滞在日数も伸びる
体験・観光施設 写真データを付ける 単価と、SNSでの拡散
物販・土産 名入れ・ギフト包装・免税表示 購入点数。まとめ買い
美容室・サロン 日本ならではの施術を前面に 指名率と、追加メニュー
共通して効くのは「持ち帰れるもの」

写真、名入れ、限定品。旅行の記憶を形にできるものは、
価格の壁を越えます。しかも、次の客を連れてきます。


11. よくある質問

Q. 値上げをせずに、本当に単価が上がりますか。

上がります。セット化と選択肢の設計だけでも変わります。 値上げは最後の手段で、価値の伝え方を変えてからのほうが受け入れられます。

Q. 外国人客だけ高い価格にしてもいいですか。

おすすめしません。 二重価格は口コミで必ず可視化され、評価を落とします。同じ価格で、外国人が価値を感じやすい組み合わせを用意するほうが安全です。

Q. 英語が話せるスタッフがいません。

問題ありません。必要なのは語学ではなく、写真と価格が書いてあることです。 実際、言葉が通じなくてもチップを渡されることがあります。決めているのは体験の質です。

Q. どのくらいで効果が出ますか。

メニュー表とセットの設計は、その日から変わります。予約サイトの比率を下げる取り組みは3〜6ヶ月かかります。

Q. 客単価を上げると、客数が減りませんか。

押し売りをすれば減ります。 選択肢を増やし、価値を伝えるやり方なら減りません。むしろ、選べることで成約率は上がります。


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まとめ

客単価アップは、値上げではありません。

1
確かめる
予約サイトに毎月いくら払っているか。上げる前にここ
▼
2
選ばせる
松竹梅の3段階。真ん中を売りたい価格に
▼
3
足す
セット化。特に持ち帰れるもの
▼
4
伝える
直訳をやめる。既知のものに例える
▼
5
押さない
「高いですよね」に共感し、下の選択肢を出す

そして最後に、最も大事なことです。

自分の商品を、自分が面白いと思えているか。 売れる車夫と売れない車夫を分けていたのは、テクニックではなくそこでした。

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この記事を書いた人
川名 友貴
川名 友貴 (かわな ゆうき)
株式会社MILOKU 代表取締役/インバウンド集客コンサルタント

オリックス銀行で法人融資を3年経験したのち、D2Cアパレル事業を創業。その後浅草で人力車の車夫として現場に立ち、マーケティング責任者として人力車業界にいち早くWeb施策を導入。ロサンゼルス支店の立ち上げも担当しました。2025年に株式会社MILOKUを共同設立。

浅草で忍者体験カフェなどを自社運営しながら、宿泊・飲食・観光施設・自治体まで、セミナー・相談を含めて300社以上のインバウンド集客を支援しています。

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